種子法を失くして何をしようとしたのか、日本政府。

多国籍企業が、一国の政府を相手取り、「不利益を被った」としてその国の「貿易規制」や「公的機関」そのものを多額の賠償金で訴える、ISDN条項等が含まれる「自由貿易協定」が網の目のように世界を覆っています。訴えられる前から降参し、この要素を取り除くための奔走する日本政府の働きが、不気味かつ理解不能です。その一つが種子法の廃止です。
小山久美子(Moniquekumi) 2022.11.23
誰でも

種子法廃止法

は、2018年4月1日に施行された「種子法廃止法」の憲法違反を国に認めさせ、違憲無効とすることを訴える裁判です。現在10月7日の違憲陳述を経て、結審は12月の予定でしたが、3月まで伸びたとのこと。前回6月8日の原告尋問・証人尋問を経て、今回の書類提出にあたり、裁判所が行政の側のプロセスに瑕疵がなかったかどうかを調べる必要性を感じた、と考えられ、若干ですが希望の灯る途中結果になりました。

TPP違憲訴訟チームが、種子法廃止違憲訴訟チームに移行しました。しかし田井さんは新人。

TPP違憲訴訟チームが、種子法廃止違憲訴訟チームに移行しました。しかし田井さんは新人。

当該「種子法」とは、

昭和27年5月に、戦後の食糧増産という国家的要請を背景に制定された法律で、主要農作物(稲・大麦・はだか麦・小麦及び大豆)の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産について、圃場審査、及びその他の措置を行うことを規定しています。

種子法は、その土地に合った、病気や冷害にも強い優良な種子をしっかり生産し、保管し、安価で農家に種子を行き渡らせるという役割を担うためにありました。予算があって、都道府県がお金を払う管理・育成・検査等の業務が存在していたわけです。その予算が取り払われ、管理の義務がなくなりました。

一体どういった意図が働いていたのか?

これはTPPなど大国との「自由貿易協定」の細則に書かれた「非関税障壁の撤廃」に相当し、種子法により日本の農家の経営を守ってきたことそのものが咎められ、巨大アグリビジネス企業に、農地や農作ビジネスの権利を与える、というものです。

文字通り滅茶苦茶な話で「商売にフェアであることを求める」という国境をこえた屁理屈は、国家間の戦争を用いない、自由貿易に名を借り、金の力で地上げを強行する侵略行為です。しかも「内容に秘密協定があり内容を明かせない」として情報公開にも応じず、蓋を開ければ我々は座して死を待つのみなのか・・・。

条約は現行法律の上位とされる

現行の法律より上位に来てしまう「条約」の内容を否定できるのは憲法だけです。自民党公明党には、新自由主義勢力の金脈がきてしまっていますから、「憲法邪魔なので必ず変えてください!」という海外勢力の依頼に応じて、外注された内容を反映しようとしているはずですが、憲法を易々と改定する誘惑に、応じてはならないのは、このためです。欧米の貴族とその金庫番達にとって、日本の法律は既に捻じ曲げることが可能です。自由貿易協定を締結さえすればあとは邪魔なのは、現行の日本国憲法(国民の基本的人権を保障するため)のみなのです。

どう闘って、我々の生活や生産の権利を守れば良いのか・・・・。

山田正彦弁護士(民主党政権下における前農水大臣)はTPP交渉の内容をオーストラリア・ニュージーランド経由で入手し、翻訳チームを編成して、今後どのようなことが起こり得るのかを調査しました。同時に違憲訴訟弁護団を編成し、農業だけでなく金融や士業の分野まで、できる限りの情報を開示し、国内の各機関や、国民への内容周知に務めてきました。これぞ信念、政治家の仕事です

TPPなどの自由貿易は、表紙近くの大義名分は美辞麗句に溢れていますが、その細部が民主的な貿易関係を塗りつぶす、大変に一方的にファシズムな内容になっています。しかも秘密及びスピード交渉であり、植民地施策としか呼べないものになっています。

TPPなどの自由貿易は、表紙近くの大義名分は美辞麗句に溢れていますが、その細部が民主的な貿易関係を塗りつぶす、大変に一方的にファシズムな内容になっています。しかも秘密及びスピード交渉であり、植民地施策としか呼べないものになっています。

バイオテクノロジーの産み落としたものは

皆さん、昨今はご存知かと思いますが、現在日本で栽培されている野菜や穀物の種子が、バイオテクノロジーで人間の手を加えることによって、雄性不稔、という子孫のできない種子にわざわざ置き換えられており、これによって自家採種ができない農家の元手が毎年高額にかかるようになり、一方で雄性不稔の種子を販売する巨大アグリ企業がひたすら毎年、巨額の富を得る構図が描かれています。

一般農家は不採算で独立を困難にされるだけではなく、現在までに積み重ねた知見と技術を、海外の巨大アグリ企業に無償提供するようにと勝手に義務付けが行われています。これについては、筆者は日本記者クラブにおける会員向け基調講演にて山田正彦先生の説明を具に聞きまして、本当に耳と目を疑ったものでした。日本の農家はただ一方的に奪われる運びなのです。

バイオテクノロジーって、まさか人類の科学の進歩が、世界の人々を幸せにするためではなく、世界の多くの農民を苦しめるために使われるとは思いませんでしたね。失望です。しかも、これらを食べることによって、我々の個体もまた、子孫を残せなくなって行くと言われてもいます。

頑張る有機農家の、安全なお野菜。彼らが小作人にならざるを得ない「自家採種禁止」意味がわからない。

頑張る有機農家の、安全なお野菜。彼らが小作人にならざるを得ない「自家採種禁止」意味がわからない。

行政がそんな酷いことをするはずがない?

これは架空のホラーでもなんでもなく、TPPやRーCEP、FTAやEPAが締結されるのと同時進行で、経済産業省の下の農水省が実際に法改正をしながら都道府県手続きを進めているもので、日本の隅々で誠実に頑張る生産者は、まるで知らされていない事でした。ニュースも得ていない当の農家や私達は、あんぐりと口を開け、行政がそんな酷いことをするはずがないと首を捻るだけです。種子法の撤廃を、東大の鈴木教授が耳にした時も、本当に寝耳にみずだったとのことです。

漁業権などについても、突然漁師の営業権が奪われるようなことになっているのは、皆さん聞いたことがあるでしょう。築地市場の豊洲移転に再しては、元々、仲卸業者のいない世界を思い描いて設計されたもので、結局は最初からそのつもりで一般客等を遠ざけ、仲卸自体も取引が縮小させてしてしまったり、併せて全国が対象となる卸売市場法の改悪も「TPPの準備だ」として強行されました。これを道州制への入り口だとして日本のあらゆる福祉が簡略に縮小されて行く前触れだとする学者もいます。

このように戦後、国民を飢えさせないための、日本の優れた官僚たちが国民のために編んできた法律や競争に寄らず国民の命を守ろうとする公的機関が、海外の巨大企業にとっての「非関税障壁だ」ということで撤廃させられて行く、これが第二次世界大戦直後から40年間かけて、スイスのモンペルラン協会で研究された「新自由主義」という、世界の貴族のための屁理屈なのです。(TPP違憲訴訟 和田弁護士より)

新自由主義とは競争至上主義?

世界的大企業にとっての自由主義であり、民主的社会の成り立ちとは対極にあり、私企業の利益利潤優先主義と上意下達の仕組みを利用し、政治は関与していないと言い張る”一種の言い訳ファシズム”とも呼ばれています。気をつけなくてはならないのは、相手は国家ではない、ということ。政治や政治家を相手にした問題ではないということです。ダポス会議は世界の富裕層の会議であり、G7やG20と言った、世界の民を幸せにしようという政治家の集まりではないのです。その認識を誤ってはなりません。

本訴訟は、国民の食糧確保と食の安全(実験台にされる)を考える上で、最も深刻な訴訟です。訴訟団は、全国の地方自治体(都道府県)に別途、条例としての種子法を導入させ、地元の農民と農業を守るよう、指導しています。大変な講演の量と、映画作成などの努力の結果、現在は全国の約半分が実施に応じたところです。

しかし、条例は、完璧ではありません。もう既に綻びは見え始めているのです。

日米を舞台に、様々な人々へのインタビューを通じて編まれた映画。農民の呟きは重い。映画公式サイト:https://kiroku-bito.com/shoku-anzen/  あなたの街でも是非♫

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日本政府が、私達の生業や命を勝手に差し出す?

このように、我が国の政府が、我々の生業や命を大国の企業にタダで差し出してしまうような時代に差し掛かり、有志が、なんとか国民の命を繋げるよう謀ったり、着実に相手の牙を取り除いていかなくてはなりません。また、この時代、この原理を知らない政治家は、事象や問題の把握に全く歯が立たなくなっていくでしょう。

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本訴訟の経緯

確認すると、2019年5月に第一次訴訟を提訴し、原告の意見陳述、2021年6月に第2次訴訟提訴で憲法学者の意見書提出、証拠DVDを法廷で上映、2022年4月に第3次訴訟を提訴、6月に原告尋問。採種農家・栽培農家・消費者・農政の諮問委員である東大教授・憲法学者・元農業試験場職員に対しての「証人尋問」が行われました。

6月の原告尋問では、証人らはそれぞれの現場から、早速その身に感じる変化と戸惑い、利益毀損だけではなく、公益に間違いなく及ぶ悪影響、却ってこの国の農業が競争力を失う事運び、この後に展開される農村の危機、等を切々と語りました。

UPLANさんよりお借り。6月の裁判、証人喚問の後の集会。

UPLANさんよりお借り。6月の裁判、証人喚問の後の集会。

「種子法が無くなるという事は、今まで都道府県が行ってきた、奨励品種決定調査事業とか、しっかりした種を生産するという事業の基盤を無くすことである。よりもっと地域に合ったもの、美味しいもの、丈夫なもの、等の品種改良の育成事業もなくなってしまうということ。」

「戦略物資にもなる種籾が、民間或いはグローバル企業に移るというのは、とてもこの国にとって危険な事。種子法の廃止により、現場や公益に資するかどうかの試験・検査をする過程が無くなっていると、民間の参入によって、種子育成の方向がとんでもない方向に誘導されたり、その品種の特性が発揮できない条件で普及させてしまうなどの弊害も考えなくてはならないだろう。」

「グローバル企業に作付けの種を強制される場合、除草剤耐性遺伝子組み換え作物の場合、セットで使わされる除草剤のグリホサートによる顕著な健康被害を甘受しなくてはならなくなる。インドでは子供達に大きな健康被害が出ており、アメリカでは癌になった成人男性の裁判で、モンサントが敗訴したという例もある。」

農水省が本意で行なっていることではない?

有機栽培に於いては遺伝子組み換えやゲノム編集の種子も使う事はできない。みどりの食料システム戦略の中で有機農業25%達成のためには、”有機種子の確保”を、国がきちんと法律をつけて確保していく必要がある。日本に於いて古くから栽培されている在来の種子、伝統的な作物の種子は、重要な国の文化財として守っていく必要がある。」

化学肥料は地球の土壌に壊滅的な打撃を与えているので、気候変動・地球温暖化のスピードを緩めるために有機農業は大きな効力がある。しかし、みどりの食料システム戦略と種子法廃止は整合性がない。」

「都道府県が種子事業を続けられるのは、民間企業に種子事業を委託するまでの間のみ、以降期間において開発した種子も企業に譲渡するように、という農水省の通達になっているが、農水省が本意でやっていることでない事は明らかである。」

竹中平蔵を画面に迎えた、安倍元総理の未来投資会議。やはり杜撰な政治であったとしか言いようがない。

竹中平蔵を画面に迎えた、安倍元総理の未来投資会議。やはり杜撰な政治であったとしか言いようがない。

規制改革推進会議と言う所の決定が絶対的になっている為、省庁の良心が覆されている。更に言えば、その上の未来投資会議、という官邸の会議体からのトップダウンだ。日本の第一次産業の省庁の仕事はまるで経済産業省の下におかれ、全く判断を通すことが儘ならない。」

「これは、米国企業が、日本にしてもらいことがあれば、規制改革推進会議を通じて実行させるという約束が、TPP協定2カ国間サイドレターによってなされていたものが有効な為。結論ありきで、従来の民主的な政策決定プロセスが完全に崩壊してしまっていると言っていい。」

「この分だと我が国の政府は、国民全体が飢餓に陥る事態になっても対策が取れず、本当に食糧や生産資材が止まりかねない政治状況である。」

政治が一体、私たちに何をしようとしているのか?驚愕の事実を一人でも多くの国民に伝えよう!

政治が一体、私たちに何をしようとしているのか?驚愕の事実を一人でも多くの国民に伝えよう!

制度後退禁止原則・立法課程統制論

この訴訟では、簡単に言うと、政府の話の進め方に瑕疵があったという指摘において、違憲を認めさせるような運びになっています。「制度後退禁止原則」に基づき、「立法過程統制論」において、考慮すべきを考慮しなかったり、必要な審査過程を勝手に省略したりと、判断過程の瑕疵が著しい場合は、立法裁量を逸脱するとして<憲法違反>と判断されるというものです。

特に今回は、①食糧の安定供給②農業の多面的昨日の発揮③農業の持続的発展④農村の振興、を実現するために、農政の研究者・農業団体の代表・消費者団体の代表・企業経営者など各界の専門家達が審議員となって開かれる農村政策審議会を開かなかった政府が理由や今後についての方針を説明した内容が虚偽だった、などの事が問題にされる模様です。

担当の憲法学者 土屋仁美 金沢星稜大学経済学部准教授

担当の憲法学者 土屋仁美 金沢星稜大学経済学部准教授

政府の嘘というのは、

「種子法が廃止されても、都道府県の取り組みは変わらない」とする答弁と「種苗法によって種子法に代わる手立てを取る、従前と同様に、種子事業の財源を確保する」とした答弁です。

実際には、予算は取られず、都道府県では財源の枯渇から事業を継続できなくなりました。

また、審議会に何ら知らせず、農政に関係する専門家をも排除して、参考意見も聞かずに唐突に提案され、瞬く間に採択されたこと自体も、行政として重大な瑕疵になります。

結論、種子法の廃止は、「憲法25条が保障する食糧への権利を侵害」、「農政の基本を無視」し、「立法裁量を逸脱した内容と手続きによるもの」と判定され、現憲法に違反すると言えるのです。

現行の法律の重みを感じて欲しい

証言の数々を聞いて、憲法学者の土屋教授は、

「今までは食糧供給のための最も基本的な生産資材だと捉えられてきた種子・種苗というものが急に戦略物資と捉え直された、ここが問題になると思います。」

「食料・農業・農村政策審議会は、食料・農業・農村基本法の39条に基づいて設置されるものです。開催は法により定められています。」と、述べました。

また、重要な観点として「後退措置」という概念を挙げました。

「小規模農家にとって不可欠な既存のサービスの撤廃をする事は、世界人権宣言の社会権規約により硬く禁止されている<後退措置>に該当しうる、と指摘され待ています。相当強力な正当化がなければ、後退措置というものは禁じられています。事後にも厳しい証明が締結国には義務付けられています。」

※ 国際人権規約は、世界人権宣言の内容を基礎として、これを条約化したものであり、人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なものです。社会権規約と自由権規約は、1966年の第21回国連総会において採択され、1976年に発効しました。日本は1979年に批准しました。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/index.html

この、世界人権宣言の社会権規約の中にある「人権要綱の後退措置は禁じられている」という部分は、我々が日本国憲法に書かれた基本的人権を後退させないためにも、重要なキーワードであり、昨今の新自由主義的政治を批判するに当たり、大いに応用すべき言葉であることを野党と市民は覚えておくべき、と肝に命じましょう。

指摘される「行政の不適切な対応」

そして憲法学者たちは「今回の司法審査には、立法の真の目的を炙り出す機能が注目されます」と明言しました。「種子法の廃止が誰の利益になり、誰の不利益になるのか、可能な限り透明にし、十分な情報の下で審議・決定されるべき」と申し述べました。もちろん、前者は国民ではなく、政府でもなく、外国籍の大企業群であります。後者は日本国民です。

私たちは、メクラ印の条約発効によって、みすみす自らの生活や食糧源、安全な食物を選択する権利を手放すなど、真っ平御免です。責任は国会と政府にありますが、国会を政府が騙した面がある限り、将来日本国民が飢えたり、不必要に命を短く奪われるのであれば、その責任は政府にのみ、ある、と言うこともできるでしょう。

様々な立場の現場の方々からの証言を見渡した結果、元々、議論も情報も不十分であった事に対し、憲法学者たちは、<行政の不適切な対応>数カ所の指摘を行いました。

2022年6月の公判の内容は、この冊子に記録され、必要な機関や原告に配布されました。700円の証言集です。この記事も、こちらを拝読し、現場の方々の直の声を確かめながら書いています。

2022年6月の公判の内容は、この冊子に記録され、必要な機関や原告に配布されました。700円の証言集です。この記事も、こちらを拝読し、現場の方々の直の声を確かめながら書いています。

10月7日の公判

これに続く本人陳述という事で、原告代表、他、弁護士4名が「食糧への権利」「廃止に伴う被害」「廃止に伴う財政上の問題」「種子法廃止法の違憲性について」それぞれ、意見陳述を行いました。筆者はこの日は、裁判所の傍聴に間に合い(抽選にも通り)これを間近で見聞きすることができました。

>原告、立教大学池住義憲(いけずみよしのり)教授

池住氏が3つの国際NGOに従事した頃、1996年の世界食糧サミットの開催に関与し、そこでローマ宣言「全ての人にとっての食糧安全保障」が採決されたことを引用し、これは私自身の存在意義に関わることなのだ、と一人称を使って話し始めました。

氏は、種子法廃止法が、国際的認識の流れに真っ向から逆行していることと、日本国民にとっての食糧安全保障を脅かすものである、という認識を説明しました。現在のクワトロショックに追い打ちをかけ、未来のまだ見ぬ日本人達が、このままでは確実に飢える事になる流れ健康で無事な生活が損なわれるに違いない流れを発見し、これを見過ごせないと話しました。

立教大学教授 池住義憲氏。http://former.airoren.gr.jp/ai-minnano/2003y/ai-ikezumi/ikezumi-profile.htm

立教大学教授 池住義憲氏。http://former.airoren.gr.jp/ai-minnano/2003y/ai-ikezumi/ikezumi-profile.htm

そして、司法府に対して強く、「どのような権力・圧力から影響を受けることなく、独立して公正な判断を下し、権利侵害、不安に苛まれる市民を救済する砦となるよう憲法に基づき良心に従い、公正な審議と判断をお願いする」と申し渡しました。・・・まさに安倍一強時代、司法は骨抜きとなり、違憲訴訟の裁判官がほぼ、官邸や内調(カルト公安)などに牛耳られ、憲法の威信が損なわれてきました。統一教会がお縄となりつつある現在、裁判官たちに顔色が戻ってきました。このまま、司法が息を吹き返すことを願ってやみません。

>原告ら訴訟代理人の田井勝(たいまさる)弁護士

本件訴訟が、憲法25条、13条、22条等が保障する「食料への権利」「種子の権利」党の基本的人権を侵害するとして、同廃止法の違憲無効を訴えています。と同時に、世界人権宣言の社会権規約「十分な食糧への権利、安全な食糧への権利、十分な生活水準確保の権利」を引用し、我々が得るべき食料の量と質及び適切性を、「締結国の法的義務」として実現達成に邁進しなくてはならないことを確認しました。

横浜合同法律事務所 田井勝弁護士

横浜合同法律事務所 田井勝弁護士

そして、食料への権利保障のため、農業者の権利が保障されなければならないと踏み込み、安定的・持続可能な食料への権利が保障されるために、農業者が経済的にも物理的にも安定的に営農できることが保証される必要があり、憲法22条の「営業の自由」29条の「財産権」としても保証されるべきものと主張しました。

種子法は食料の根本である種(たね)の生産体制を整え、良好で安全な種子を安価で一般農家に提供し続けること、を目的として1952年に作られました。食糧の増産と安定供給が目的でした。しかし、種子法が廃止された結果、都道府県の種子供給に関する事業の法的根拠がなくなってしまいました。

すると何が起こるでしょうか?予算が無くなり、各都道府県が種子の公的圃場審査・生産物審査を行わなくなり、種子の安定供給や、その安全性に影響がでる危険が出てきたのです。

都道府県の予算が種子の育成に投じられなくなったので、既に原種の値段が3〜5倍に値上がりし、種子価格平均も2〜3割程度の値上がりが生じているため、農家の経営に影響が出てきているところです。

また、地域にあった品種の育成が続けられず、企業の生産性に偏った物差しで淘汰されてしまう恐れもあり、多様性の保護がなされないことも、食糧の安定供給に影響が生じる要素となり得ると訴えました。

>原告ら訴訟代理人の岩月浩二(いわつきこうじ)弁護士

食料品の値上げだけではなく、必要な食料が手に入らなくなる事態が目前に迫っている、種子法が成立した戦後間もない時期と同様の「飢餓のリスク」が迫っている、と投げかけました。

今の日本の自給率は、1966年の統計開始以来、最低の水準である37%となっており、しかも種子は9割が海外に依存しています。穀物自給率で言うと実は28%と、これは1億人を超える国家としてはあり得ない数字です。

「更に種子法廃止で種子事業を民間に委ねるとどうなるかというと、2035年に予測される穀物自給率は11%という壊滅的な数字になるといわれています。自殺行為に他ならない!」という東大の鈴木教授の見解を、裁判官に改めて伝えました。

凄腕、岩月浩二弁護士。漁業権の問題も取り扱っている。https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2013/10/131028-22598.php

凄腕、岩月浩二弁護士。漁業権の問題も取り扱っている。https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2013/10/131028-22598.php

日本の場合、農業者への弾圧とも言える冷遇、所得保障の撤廃、減反政策などという自虐的な政策が繰り返されてきました。適切な対応の不在、自民党のアメリカへの交渉力の無さ、不甲斐ない自己利益への埋没、消費税の増税のために元手が膨れ、地方で多くの農家が事業を畳んだり、自殺したりと目も当てられない惨状を、これまでも放置してきています。

日本は瑞穂の国、というのがアイディンティティですが、現在は高コメの単価が低いこと、肥料や資材の高騰、などで採算が取れないことなどから、高齢化で後継がいないことを理由にこれまでの水田の何割かは確実に、ここ1ー2年で消失してしまう見込みです。想像してみてください。日本の水田の半分が無くなったら、一体どうなるでしょうか?

日本には「食料・農業・農村基本法」が存在します。1999年WTOの発足と同時に、貿易の持つ本質的な不安定性を直視して編まれた法律でした。この法律は自給率の向上させる計画の作成を国に義務付けていますが、自民党と公明党の政治はこれを守らず、自動車や実質的な軍事産業などに関心を取られ、その重要性を無視してきました。

今回の種子法廃止も、この法律により定められた農業審議会を回避して決議されました。つまり、これは行政の違法行為なのだと、岩月弁護士は強調しました。

岩月さんは東大の鈴木教授の言葉を受け、官邸が海外の投資家や大企業の都合を反映させる「未来投資会議」からの「規制改革会議」のトップダウンによって法で定められた民主的決定プロセスを疎外していることを告発しました。内閣法制局の意見すら排除して、彼らは農林水産業を私物化し、交換条件として海外企業に農林水産業の営業権さえも差し出しているのです。竹中平蔵〜安倍元総理らの杜撰な政治は、多くの国民と国の未来を裏切ったのです。

これにより、国が国境や海域で食料を囲い込むことができず、国内の食糧が海外に持ち去られて私たちの元に残らないという事態さえ、考えなくてはならないのです。これは、米騒動以前への退化です。

原告ら訴訟代理人の平岡秀夫(ひらおかひでお)弁護士

国が国会議員に対して嘘をついたという証明について平岡弁護士は、平成29年3月23日の大臣答弁を踏まえ、後の答弁書でいい加減なことを書いて寄越しました。「種子法廃止後も、都道府県は、必要な種子の供給事務を継続している。同事務に要する財政需要についても種苗法及び農業競争力強化支援法に基づき、引き続き地方交付税による措置がされている。」

結論から言って、これらは虚偽答弁でした。

民主党政権下に於ける法務大臣であった平岡氏。嫌がらせに挫けそうになった日もあったようだ。

民主党政権下に於ける法務大臣であった平岡氏。嫌がらせに挫けそうになった日もあったようだ。

原告らは公表情報である「地方交付税制度解説」という発行物に於いてこれを調査し、財源需要も金額も、明確に示したものが残されていない事を突き止めました。また、後半の二法で継続を措置したと書かれていましたが、農業行政費を見る限り、計上は何一つありませんでした。大臣の答弁も言い逃れだったし、答弁書も相手を諌めるだけのもので中身は空でした。

また、行政事務細目の「生産流通振興費」という今まで種子供給事務が含まれていた予算が実際、大幅に減額されていた事も突き止めました。そして職員の言説で、「種子法が廃止になったんだから、そのお金が来ていない」との証言も得ました。「引き続き地方交付税による措置がなされている」とは、真っ赤な嘘だったのでした。

県営であった原種農場、国からお金が来なくなったけどやめるわけにいかないので、種子の値段を上げるしかありません。今のところ何とかしてくれている県もありますが、このままでは細っていきます。栃木県では原種が3倍の値段になりました。農家は更に不採算を強いられるのです。平岡弁護士はこのような現実と、行政の不誠実な態度を裁判官に、伝えました。

憲法学者、古川健三(こがわけんぞう)弁護士

先に6月の証人尋問で彼が述べたことを再び整理し、裁判官に伝える機会になりました。既述ではありますが、種子法廃止に対する違憲審査の観点を羅列された、と言うことになります。

古川弁護士は、種子法廃止の違憲性の一つの面は「農家などの経済的自由に関する規制緩和立法である」と言うことで、争点は審議と決定のプロセスです。もう一つは、「社会権保障の制度の後退禁止原則に触れる」と言う側面である、と、まとめました。

古川健三弁護士

古川健三弁護士

種子法は戦後の食糧不足の中、「食糧増産という国家的要請」と言う立法事実を持ちました。奨励品種制度により、国や都道府県によって品質が保障された種を、農家は安価に仕入れて作付することができました。就農者に安心と余裕を与え、安全安心な食糧を増産してもらってきたのです。

これを廃止すると言うことは、小規模農家の農業経営を支援してきた制度の撤廃であり、更にこれは「消費者誰もがお墨付きの安全な食料を入手できる国」とするための措置でしたから、<国が国民のための食糧を保障する気がなくなったのだ>と言う大きな問題だと捉える必要があります。一部の人々が「植民地施策だ!」と仰いますが、まさに主権国家の役割の一部を放り出した、と同義です。

このような、国の態度の豹変に対し、国民を代表して立ち向かうべく、古川弁護士は、司法を厳しく見据えて言い渡しました。また、途中、前回の土屋証人の証言を引用しました。

「司法審査の役割は、政府の行為の帰結を統制するものではなく、政府の行為の理由を統制するものとして捉えるべきである。」

「国民代表の討議の場である議会における、熟慮と討議のプロセスの産物として立法事実のがなければならない。誰の利益になり、誰の不利益になるのか?十分な情報はあるか?

司法には審議過程についての審査を行うべき役割ないし機能がある。今回の審議と決定のプロセスに瑕疵がなかったかどうか注目する必要がある。」(土屋証人証言)

行政の瑕疵としては、間違った情報の国会への提供や、その場の言い逃れ、中身や実効性のない宣誓等、虚偽がありました。これも司法が審査の観点にすべき点であります。実際、国は答弁にて「種子の品質基準確保は、種苗法に置き換えられる」としていましたが、実のところ、種苗法は種苗の交換価値保証を目的とするもので、種苗法によって種子の安全性を帰省することなどできない、つまり答弁は完全な嘘だったのでした。

また、もう一つの制度後退禁止原則については既述の通りですが、より詳しく、「社会権の内容を形成する制度について、その制度が一旦具現化されている以上、当該制度を正当な理由なく後退・撤退することは、憲法上の人権を不当に制限・剥奪するもので許されない行為というべきだ」と、解説しました。 ー 驚くなかれ、我々は「剥奪される」という状況を思い描く必要に迫られています。

種子法無き後、当面は種苗農家や、種苗を買う農家が困窮しますが、農家を続けられなくなれば「営業権の剥奪」でありますし、日本の基本的な食糧が不足した上に、今後、世界の食糧不足により食物輸入に制限がかけられると仮定すれば、我々の「食糧へのアクセス権の剥奪」、そして飢餓により、生きるか死ぬかになれば、「生存権の剥奪」にも通じます。

例えば、私たちが主食とする米の種が、全て枯葉剤のモンサントの製造した人為操作のものに置き換えられると想像してみましょう。モンサントの種子は、ラウンドアップなどの農薬の使用がセットになった企画です。農薬による癌や脳神経の病気が起きたり、遺伝子操作やゲノム編集が行われた種子により、私たちの遺伝子にも傷や変化が齎される可能性が否定できない場合、私たちは種子法によって安全な米を食べていた時代を懐かしく思いながら早死にして行くことでしょう。

多国籍企業にとって有色人種など、人体実験の対象でしかありません。人口削減のアジェンダはまた、水と種子の支配と、そして医薬品による支配を持って行われるとも言われています。

食品の安全性の欠如は、後に広範囲に重大な被害をもたらす一方、因果関係の立証は難しく、損害賠償による事後的な救済も困難です。これはまだ臨床試験中のコロナワクチン接種で、副反応により多死して行く現在の状況を眺めても、同じ要素が見て取れます。

だからこそ、人体に安全であること、地元の風土でよく育つこと、病気や虫に強いこと、美味しいこと、そういった優良な種子を、国や都道府県がちゃんと検査しながらここまで、登録し、守り育て、共有し、しかも安価で農家にお分けしてくれていたのです。そういう一般からは見えにくいシステムに守られて、私たちは現実的な値段で、米や野菜等の食糧を毎日、いただいて来れたのです。

「憲法は絵に描いた餅ではない!」(浅沼茂裁判長昭和35年)憲法は、国民を守るために生かしてこそ、です。そして軍事費増強のために憲法改正を進めたがっている与党勢力の賑やかなことですが、古川弁護士は最後に、静かにこう言い切りました。だから。。。

「どれだけ立派な憲法をいただこうと、安心して食べられるものがなければ国は滅びますよ」

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